2025.07.25

ブランド価値とは?機能的価値・情緒的価値・社会的価値の構造

川内 祥克 株式会社TCD 取締役副社長 クリエイティブディレクター

ブランド価値とは?機能的価値・情緒的価値・社会的価値の構造

この記事の定義

  • ブランド価値とは:USP*・機能的価値・情緒的価値・社会的価値で構成され、顧客や社会の認識として蓄積される企業固有の無形資産。品質や性能(機能的価値)だけでなく、「このブランドが好き」という感情(情緒的価値)と「社会にとって意味がある」という認識(社会的価値)が重なることで、価格以外の選択理由が生まれます。
    USP*:ユニーク・セリング・プロポジション
  • MVVとの関係:ミッション*・ビジョン・バリュー(MVV)はブランド価値を定義し組織に根付かせるための体系。MVVが機能すると、社員の行動が一貫し、顧客との接点でブランド価値が繰り返し体現されます。
    ミッション*:パーパスを別途策定することもある
  • TCDの定義:TCDでは、ブランド価値を「顧客・社会・組織の三者が同じ文脈でそのブランドを評価できる状態」と定義しています。

「良いものを作っているのに選ばれない」——この問いに答えるのが、ブランド提供価値ピラミッドです。USPを基点に、機能価値だけでは差別化は難しく、情緒的価値・社会的価値を積み上げることで価格以外の選択理由が生まれます。本記事では、ブランド価値の構造と、それをMVVとして組織に実装する方法を整理します。
ブランド戦略とは?商品ブランディングとは?もあわせてご参照ください。

TCDのブランド価値の考え方

ブランド価値とは
USP・機能的価値・情緒的価値・社会的価値の四層で構成され、顧客・社会・組織の三者が同じ文脈でそのブランドを評価できる状態として蓄積される企業固有の無形資産。

四層構造の考え方
機能的価値(品質・性能)は比較されやすく模倣されやすい。情緒的価値(体験・デザイン・ストーリー)と社会的価値(パーパスへの共鳴)が重なるほど、価格競争に依存しない選ばれる理由になる。

ブランド価値を高める条件
一時的なキャンペーンや制作物ではなく、組織行動・顧客接点・社会との関係性を一貫させることで、認識が蓄積されブランド価値が形成される。

MVVとの接続
ミッション・ビジョン・バリューは、ブランド価値を定義し組織行動として再現するための体系。MVVが機能することで、ブランド提供価値が社員の判断と行動に宿る。

ブランド価値とは何か:四層構造の全体像

ブランド価値は、以下の四層で構成されます。

  • USP(差別化核):ブランドが提供価値を形成する起点となる独自性。
  • 機能的価値:品質・性能・価格・利便性など、商品・サービスが提供する客観的なベネフィット。比較・検討されやすく、差別化が難しい層。
  • 情緒的価値:「このブランドが好き」「使うと気持ちが上がる」という感情的な評価。体験・デザイン・ストーリーによって蓄積されます。競合が模倣しにくい層。
  • 社会的価値:「このブランドは社会や文化に対して意味がある」という認識。パーパス・社会との関係性・時代性への共鳴によって形成される。

四層がそれぞれに強まるほど、ブランドは価格競争から遠ざかり、「選ばれる理由」が深くなります。ブランド価値を高めることとは、この四層を一貫して磨き続けることです。

MVVがブランド価値に接続される理由

さらに、企業ブランディングの基礎となる「ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)」について見ていきます。MVVは、ブランド価値を組織の内側から定義し、全社員が同じ方向へ動くための体系です。

企業ブランディングのお手伝いをする際、このMVVづくりを一からお手伝いすることもあれば、社内で検討されている場合もあります。社内で検討されている場合、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」それぞれの定義があいまいだったり、どのように言葉にしていくべきか確信が持てなかったりする場合が多くあります。

ここで重要になるのが上記に示した「ブランド提供価値」です。自分たちの強み・提供価値(=差別化優位性)が何で、どういったビジネスを行うのか。事業の根幹となる部分をスタート地点にしないと、MVVが現場とかけ離れた、実態を伴わないものになってしまいます。

ミッション:企業の目的・存在意義

P・F・ドラッカーは、初期の著書『現代の経営(1954)』より変わらず、企業にとってはその目的、すなわち「ミッション」が最も重要であると説いてきました。組織はすべて、人と社会をよりよいものにするために存在する。すなわち、組織にはミッションがある。目的があり、存在理由がある。

「ミッション」はカタカナから「任務」の意味合いを強く感じますが、原語の「パーパス」と捉えるほうが本質に近いでしょう。「人と社会をよりよいものにするために、その会社が存在する理由」——これがミッションの本義です。

ビジョン:実現を望む未来の姿

ビジョンとは、ミッションを実現するための青写真です。企業の存在意義(ミッション)と、それを実現した未来(ビジョン)は表裏一体です。中期経営計画に示されるような3年後、5年後の姿ではなく、10年先の「ありたい姿」を描くことが重要です。3年先だとどうしても現在の既定路線、延長線でしか捉えられません。

バリュー:企業文化を生み出す価値観(または行動規)

ミッション・ビジョンを達成するのは、社員一人ひとりの行動の集積です。そして、組織文化として「バリュー」が果たされた時、ブランドの提供価値も体現されます。パーパスやミッション・ビジョン・バリューといった企業理念は、よもすれば現場との距離が生まれがちです。しかし「ビジネス」から始め、ブランド提供価値と接続することで、組織活動全体の基盤となるのです。

ブランド価値を高めるために必要な一貫性

「既存の社是をどうするのか」「創業の精神をどう扱うのか」——MVV策定で必ず浮かぶ問いです。創業の精神は歴史もあり企業文化に刻まれているため、残す場合がほとんどです。既にある社是・社訓がMVVと内容が重複するなら、新しいMVVに統合したほうが社内浸透を図りやすいでしょう。

MVVの浸透と組織文化

昨今では、MVVやパーパスを定めたものの社内に浸透しない、社員が共感していないという課題が増えています。上場企業においては、MVV浸透度の開示が求められるようにもなってきました。

しかし、MVVは理念を掲げるためではなく、ブランド提供価値を組織行動として再現するための仕組みです。だからこそ、まず見返すべきはブランドの提供価値です。自分たちの生業に立ち返り、強みを磨いていくべく社内の組織行動を揃え、それが顧客体験を高めることとなり、社会認識を変えていく。そうした一貫した流れこそが、ブランド価値を形成していくのです。

ブランド価値について詳しく知る

ブランド価値の蓄積を、戦略から実装まで支援します。

ブランド戦略支援サービスを見る

[筆者プロフィール]

川内 祥克

株式会社TCD 取締役副社長 クリエイティブディレクター

東京オフィス代表。ブランド戦略、インナーブランディング、組織文化、パーパス浸透を中心に、企業活動全体を接続するブランディングを支援。

筆者の最近の記事

一覧へ
twitter facebook

資料請求

実績資料をダウンロードいただけます

お問い合わせ

お気軽にご相談・お問い合わせください